2014年6月24日火曜日

ワールドカップとイラクを抱えた世界

世界がワールドカップで沸いている間に、イラクが泥沼化している。

2週間ほど前に、イラク第2の都市であるモスルが武装勢力ISISに渡り、今日はヨルダン国境も制圧。ISISはスンニ派の勢力。アルカイダよりも過激だという話もある。

イラクのマリキ首相はシーア派。シリアのアサド大統領もシーア派。あれ?

アメリカがイラクでシーア派の長を立てておきながら、シリアでシーア派の長を倒そうとしているのは明らかに矛盾している。しかも、イラクで勢いの止まらないISISには、アメリカがシリアの反政府勢力に渡した武器が流れているらしい。

イラン・イラク戦争の時にフセインを支援したアメリカが、90年代に入ってフセインを敵に回したことを思い出す。アフガニスタンに侵攻してきたソビエトを敵に回して、ビン・ラディンに資金と武器を与えた過去も忘れてはいけない。

中東情勢を見ていると、敵・味方の一線はくるくる変わる。敵か味方か、という単純な図式は使い物にならない。サッカーの勝ち負けとは、ちょっと違う。

9.11のが起こってから1−2週間の間、ニューヨークの人々はとても優しくなった。僕はニューヨークに来て3年目だったが、あの2001年はニューヨークが村社会の集まりであることを実感させてくれた。あれだけ違う人種が住んでいれば、互いに複雑な偏見の交錯もあるし、住民の貧富の差があれほど激しければ、シビアな利害関係が常に生まれる。しかし、9.11の直後のニューヨークでは、貧富や人種・文化の違いは取りあえず置いておいて周りとうまくやっていこうという、現実的で俗っぽくって、あたたかい人間関係が生まれていた。(今も、すこしだけあの頃の人の輪がニューヨークには残っている気がする。)

それに対して、テロリストを見つけて"Smok'em Out!"と言った、ときの大統領や、その政権の国防長官に"Show the flag."と言われて派兵した我が国の首相は、ぐちゃぐちゃな中東情勢をとりあえず敵・味方に分けて、その場を収拾しようとした。

しかし、平和な日常世界での人間関係でさえ複雑でしたたかなのに、ここ35年の中東情勢となればもっと複雑で難しい。

敵と味方という図式は、人間の営みに根本的に反する気がする。戦時下では敵か味方の区別が速いほど、生き残れる確率も高いのだろうが、そういった状況を回避するのが人間の知恵ではないのか?

ともあれ、日本の今の政権でこのままいくと、また中東に自衛隊が派遣される日は近い気がする。

イラクはワールドカップ以上に目が離せない。

いやなかんじだ。






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