6月14日の土曜日、東京の紀尾井ホールで8年ほど前に書いた「かさね格子」という雅楽三管(笙、篳篥、龍笛)のための作品を中村仁美、笹本武志、宮田まゆみの三氏に再演して頂くことになっています。
再演がなかなかされない現代音楽の世界において、6度か7度目の再演をしていただくのは、たいへんにありがたいことです。
そのコンサートの司会も私が担当することになっていて、きょうはそのコンサートで取り上げられる細川俊夫、伊佐治直、笹本武志、エリザベス・ブラウン、高岡明、小濱明人各氏が書かれた曲の音源を聞きながら、プログラムノートの予習をしています。
また私自身が8年前に書いたプログラムノートや日記も、いっしょに読み直してみました。(いま読むとかなり恥ずかしいです・・・)
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2006年12月9日
今朝のメインは初積雪となり、車検を8月に切らしていた僕は、近くのガレージに車を出しに行った。
車を整備してもらう間、吹雪に飛ばされそうになりながら、ガレージ近くのコーヒーショップにラップトップを抱えて歩く。仕事を終わらせるつもりで行ったのだが、コンピュータのバッテリーは充電切れ。ところが、店のどこを探してもコンセントが見つからない。仕方なくカフェ・オ・レにショコラティン、という自分としては異常にフレンチな朝食を食べながら、今週のニューヨーカー をカバンから取り出す。ページを開いたところに、カルヴィン・トンキンズによる、ジャスパー・ジョーンズとの長いインタビュー記事が出ている。ジョーンズと30年来の知己というトンキンズが、インタビュー嫌いで知られるジョーンズをついに説得し、彼のコネチカットのアトリエ兼自宅から、サン・マルタンのセカンド・ハウスまで行って話を聞いてきた力作。リズムの良い文体に誘い込まれる。
ホイットニーやMOMAでジョーンズの絵を何度か見ている以外に、僕はジョーンズの事をほとんど知らない。インタビューによると、彼のリビングルームには縄文土器が5点もあり、USUYUKI(薄雪)というシリーズの作品を、ここ30年近く描いているというから、かなりの日本好きであることが窺える。しかも、彼が21歳のときに、仙台へ兵役で送られたことがそのきっかけになっているらしい。兵役といっても既に彼が20歳のとき、故郷サウス・カロライナで、兵隊向けに絵の展覧会を企画運営する仕事をしていた前歴を買われての事だったから、仙台での仕事も、映画のスケジュールの印刷や、性病の危険さを知らしめるポスターのデザイン!などと、朝鮮半島の戦火からは遠く離れたものだったようだ。
僕は、2週間ほど前に特に用があるでもなく、コネチカットに1泊した。きれいだけれど、何もないところだった。仙台、コネチカット、雪、という、僕とジョーンズの淡い偶然の交錯を考える。ジョーンズも親しかったジョン・ケージの言葉を思い出す。辞書にmusicとmushroomが隣り合わせに載っているという、偶然の奇跡。
次の曲は、雪がらみでいこう。
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今年は地元宮城県の郷土史にも魅せられて、江戸時代の茶室や身近にある縄文の遺跡についてブログに書いたりしていますが、8年前の自分にとってこの雅楽器のための曲を書くということは、自分の足下を見直す作業から始まっていました。
音楽はどんなに伝統的なものであっても、お客さんの前でライブ演奏されることによって、現代のものになります。
長い時間の中でみると、ちょっとした偶然の積み重ねが、「伝統」や「歴史」を私たちに感じさせる結果になったのだとしても、つねに始原に遡って現在を考えることができる、柔軟な心を持ちたいと思います。
じつにむずかしいですが。
2014年6月8日日曜日
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Blog: 縄文、ジャスパー・ジョーンズ、雅楽
6月14日の土曜日、東京の 紀尾井ホール で8年ほど前に書いた「かさね格子」という雅楽三管(笙、篳篥、龍笛)のための作品を中村仁美、笹本武志、宮田まゆみの三氏に再演して頂くことになっています。 再演がなかなかされない現代音楽の世界において、6度か7度目の再演をしていただくのは...
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